七式ドロップス

⚽️コラム書き。だが小説に浸かり アニメに溺れ ゲーム沼に沈む。

『アンジェボール』のエッセンスが面白い 〜 新時代のスパーズ

最近、至る所でよく目にするワード、それが『アンジェボール』。

フットボリスタの記事でも紹介されていましたが、スパーズの新監督アンジ・ポステコグルーの下で行われるプレーを指して使われている言葉。以前から使われていたこのワードが流行った背景には、率いるスパーズが開幕から好調なうえに、何よりプレー内容が魅力的という点。彼の評価はうなぎ上りで、それと共にワードを認知した人が増加中ってことらしい。(彼はプレミアリーグ2023/8のマネージャーオブザマンス候補にも選出

そして、アンジェボールを象徴するプレーとしてよく見かけるのが次の動画。

このプレーを見て僕は素直にいいなぁと思ったのだけど、プレーの見方は人それぞれで、Xをざっくり眺めると快く思ってない方もいるみたい。

とはいえ、システム構造の要素が面白くて、アンジェボール自体の評価はともかくとして、育成年代の子たちにはぜひ見せたいプレーかなと。

ちなみに僕がプレーを見て気になったポイントは、

  1. 基礎的な個人戦術を背景に関係性を構築
  2. 心地よいプレー選択の反応速度
  3. 場面に応じたプレーエリアの範囲設定と、範囲内の選手配置数による優位性の確保
  4. オフザボールでのランコース。ボールの場所に応じてボールホルダーより前の複数の選手が適切なベクトルを選択(複数の、ってところが大事!)

こんな感じ。(この辺りの要素は育成年代から仕込みたいですね)

特にビルドアップ時、自陣において展開のために幅を用意しつつも、ポゼッションの肝は中央での密集も利用して数的優位な環境を整えるところが個人的にはツボ。無駄にサイドバックの動線をサイドライン付近で上下に伸ばさず、自陣での動きを中心にポゼッション要員に充てるところがいい。(偽サイドバック的な使い方だけど、ペップのそれとはニュアンスが違う印象)

例えば右サイドでのボール保持。

ここでのポイントは局地的に同数の状況の下、時間をかけずに連携によるボール交換で相手を剥がし、中央のアンカーへつなぐところ。

中央では流動性の高い配置で人数をかけ、キープを確実なものとしている。ここから空いた左サイドへ展開するのだけど、このまま前進するオプションも行使可能な状況設定がいい。

左サイドでは縦突破を試みるも途中で路線変更し、一度中央最後列にボールを戻すのだけど、状況は自チームが優位な状況で整っている。

その後、画像でフリーとなっている右サイドの選手にボールを渡し、再び前進。ここからは速度勝負で、相手陣内で加速しながらゴールへよどみなく向かう姿が見ていて気持ちいい。ここは個人戦術レイヤーの技術が特に求められる場面だが、全体を通して見ればテクニカルで知性が感じられる。

単純なスペースの利用とか、意図の薄い数的優位とか、定型的なポジショナルプレーではここにたどり着けないので、見るべき所が多くてとても面白い。僕は好きです、アンジェボール。(単に流行に弱いだけかもしれないけど 笑)

どこまでトレーニングで落とし込んでいるのか、真剣に練習を見てみたいと思わせる内容でした。

狂った展開で恐怖が加速する『ダークギャザリング』

いま、幼児先輩のオカルトホラーが熱い!

知らない人には何のこっちゃの話ですが、現在放送中のアニメ、『ダークギャザリング』のお話。回を重ねるごとにクレイジーさが増してマジで面白い。

(公式サイトはこちら

要約すると霊的なものへの復讐と救済がテーマの物語なんだけど、次々と出てくるキャラたちのあくがとにかく強すぎて、まともな人物を探す方が難しい。もっとも、人より別の存在の方が多く出演してますがね・・・・・・。

怨霊やら神様やら、主人公たちが立ち向かう相手がまずヤバイし、特に幼児先輩こと夜宵ちゃんのそれらに対する戦闘方法が、一般的なホラーとは一線を画すやり口で、これもまた狂ってていい。また、ヒロイン詠子の闇が深さが、どこまで深いのかも気になるところ(声優が花澤香菜さんなのは大正解と思う)。

それからアニメの描かれ方。昨今なかなかグロの描き方が難しいホラー作品ですが、許容範囲ぎりぎりの胸くそ悪さでしっかり恐怖を伝える演出。ここも、高評価ポイント。

第二クールの放送も決定とのことで、この狂った恐怖をまだ楽しめそうです。

『ブループラネット feat.初音ミク』〜16年の積み重ねを曲と共に

16年。

ありきたりな例えだけど、人間で言えば高校一年生。
長い?短い?
分かんない、ってのが正直な話。

とはいえ、昔話になるだけの月日なのは僕の実感。

産まれてから泣いてばかりだった、とか。
旅先でおむつからだだ漏れした、とか。
寝顔はあの頃が最高だった、とか。

16年。

過去は既に遠く、まるで異世界。
でもね、何も変わらないんだよ、君との絆は。

あの日が昔話になっても、
そしてこれからもずっと、
かけがえのない僕の半身。

・・・・・・

そんな僕の話はさておき。まずは、初音ミク16周年おめでとう。

あれから16年。当時、趣味をボカロに全フリし、時代の先を進むことに全力だった知人を見て、もしかしたら想像を遥かに超える存在になるかも、なんて思ってたら本当にそうなった未来が今ここに。

そして、発表された祈念楽曲。これがまた素晴らしい。

解説はこんな感じ。

DECO*27が「最上級のパートナー」へ贈る『初音ミク16周年記念楽曲』登場!

DECO*27が贈る『初音ミク16周年記念楽曲』登場!16年積み重ねた想いを、壮大なストリングスと疾走感のあるバンドサウンドで紡ぎ上げた至極のアニバーサリーソング!

オリジナルの他に、これもまた素晴らしいメガテラゼロさんカバーもあります。めっちゃいい。

勢いのあるメロディーに力強い歌詞。そんな歌詞の中でも僕が好きなのは最後のフレーズ。

 「過去は」「今は」 うるせえ関係ねえ
君が最上級のパートナー 過去も今も大歓声だろ
未来永劫級のパートナー

過去も今も大歓声だろ、ってところが特にいい。

そう、大歓声なんだよ。
声、響かせていこうぜ。

ファンクショナル(リレーショナル)プレーを育成に組み込むことで変わるもの

21−22シーズンのレアル・マドリー躍進の後、『ファンクショナル(リレーショナル)プレー』という言葉をWeb上でよく目にするようになった。

『ポジショナル・プレー』という馴染んだ言葉とは別の概念の登場で、あたふたした方も多いのではないかと。僕も、そんなひとり。

この概念のおかげで戦術的に考えることが確実に増えた一方で、如何せん僕の中で咀嚼し吸収するための知識量が足りないことこの上なし。とほほ。

そこで、ファンクショナル・プレーの実践編を紹介する本として登場した『モダンサッカー3.0』の力を借りることに。

ファンクショナル・プレー、本書でいうモダンサッカー3.0は、サッキのミランやペップのバルセロナで見せたラインやポジションでスペースを定義する過去の概念、つまり『単純な幾何学』ではなく、自由かつ即興的な連携で目の前の状況を解決していく『関係性の幾何学』という新しい概念のもとに行われるプレー、と語っている。

・・・何それうまいの?

と思った方は、冒頭に書いたように21−22シーズンのアンチェロッティ率いるレアル・マドリーを想像してくれたらとりあえず良いらしい。ピッチ上のことは選手中心に判断し行動していく、選手主導のサッカーを。

とはいえ、アンチェロッティは嫌や!という方もいると思うので、支持者もそうでない方にも僕が説明できるよう、次代に向けて必要と思われる要素を僕なりに抽出して書き出してみる。

  • チーム力の総和の最大化は、選手が持つ要素の連携性の向上による
  • 局所的な課題の解決は、チーム全体で選手の関係性から導く
  • ボールの位置に応じた振る舞いをチーム全体で共有する
  • 練習ではミスを自身で認識させ、様々な状況下で仲間の意図や感情の共有により、無意識下で反応するよう解決を図る

つまり、チームとしては『様々な状況で即興的なプレーを連続的に反射でこなしていく関係の構築』を、個人としては『チーム力の総和を高められる連携性』が必要な様子。

その上で、これを育成現場に対応させるとなると求められる点は以下のとおりではないかと。

  • 「うまくさせる」ではなく「うまくなる」環境づくりの構築
  • 子供たち自身が自由かつ即興的な連携のもと、目の前の課題を解決
  • プレーのルールはサッカーの原則的なもの以外設けず
  • 多様な環境下の小試合を多数経験させる

おそらく、ファンクショナル・プレーを意識せずとも似たような環境や条件で育成してる指導者は、少なからずいそうな気がしますね。

とはいえ、従来の枠組とは違う思想が根底にあり、チーム力の総和が連携性で左右されることを踏まえれば、戦術やメソッドだけでなく個の評価基準も大きく変化するはず。

従来のフィジカルやテクニックといった分かりやすく目に見えるものや個人戦術に加え、チームの課題を周囲との連携性で解決できる能力という評価基準が加わるのだから、指導者は個を見抜く力をバージョンアップしないといけない。

行く末はトレセンの選考も変化するのかな。いや、変化しなきゃいけないんだろうな。

 

(参考)育成要素の詳細について、モダンサッカー3.0から原文を部分的に引用。

  • 現在のサッカーは、ひとつのチームが90分のなかで異なる顔、異なるスタイル、異なる戦術を使い分けて、幾つもの「小さな試合」を演じている。その文脈のもとでは、チームは自由かつ即興的に連携しながら、目の前の状況を選手自身が解決していく。あらかじめ決められた戦術の遂行は求められていない(即興的に作られる状況への対応が必須)。
  • 選手間で様々な要素が相互に作用することで、『1+1』が2ではなく、3にも10にもマイナス1にもなりうるにもかかわらず、過去の慣習(要素還元的な物の見方)にとらわれ、1+1=2として扱ってきた。つまり、ある物事の構成要素をa、b、cに分解して、ひとつひとつ説明すれば全体が理解できると思われてきたが、実際は、その全体は”abcの総和”とは別物。よって、パーツから出発して全体に至るのではなく、全体から出発しパーツに目を向ける。戦術もメソッドも当然変わる。
  • 人間の自然な学習プロセスは、経験、とりわけ失敗とそれに基づく反応としての自己組織化から成り立つ。個人の場合、経験に基づいて内面化された振る舞いが反射的に出る。無意識下での反射に要する時間は0.1秒。それを認知するまでに0.5秒。如何にして無意識化でプレーするかがポイント。練習ではミスを自発的に捉え、その解決を反射として無意識化で発現させる。
  • ボールの位置と状況こそが、その瞬間の22人の振る舞いを決定づける。
  • 数的優位、位置的優位、質的優位に加え、関係性的有利(相手の意図や感情の共有の優位性)、機能的優位(関係性的優位による優位性を自覚することで生まれる優位性)という上位概念。

KingGnu「SPECIALZ」をリピートしまくる件

我が家のYUさんは呪術廻戦好きで、車の中でふたり渋谷事変談義を延々としていたわけですが、そのバックでずっと流していたのはKingGnu「SPECIALZ」。

フル配信も始まって歌詞も全容がわかり、大満足なわけですよ。ジャケット、インパクト大。

ちなみにこちらのジャケの絵も素敵。

【Amazon.co.jp限定】SPECIALZ (期間生産限定盤) (メガジャケ付)

【Amazon.co.jp限定】SPECIALZ (期間生産限定盤) (メガジャケ付)

  • アーティスト:King Gnu
  • ソニー・ミュージックレーベルズ
Amazon

にしても、ジャケットから歌詞から呪術廻戦に全フリの曲だけど、物語を想像しながらの歌詞はぐっと来るものがある。

冷静と俯瞰は御法度です

というフレーズとか、ラストの三行

“WE R SPECIAL”



誰が如何言おうと

“U R MY SPECIAL”

これで想像する場面が多いこと多いこと。ぐっと心に突き刺さる。誰がSPECIALなのかがポイントですね。

そんなこんなで、本日の僕的口ずさみ率No.1の曲にランキングされたのでありました。

なお、当然アニメではハイクオリティな映像と共に流れるわけで、これがアニメとのシンクロ率高過ぎで、この先の展開を思い浮かべずにはいられず。ほんと辛くて辛くて。そこがいいというか、つまり完璧なんだけど。

アニメでオープニングをスキップなんて、もったいなくて出来ないな。

OP"YOASOBI"、ED"milet"とかガチすぎる『葬送のフリーレン』

とうとう放送開始が間近に迫ったアニメ『葬送のフリーレン』。世界を救った勇者の後日譚を描くファンタジー作品がとうとう今月末から始まるわけですが、新たなPV公開と共に、オープニングおよびエンディング曲が発表。

その曲のタイトルとアーティストはといえば、

OP:「勇者」YOASOBI
ED:「Anytime Anywhere」milet 

これ以上ないくらい半端なくガチな面子。金曜ロードショーで劇場版やります!ってくらいの感じに見える(笑)

ちなみにYOASOBIからの告知では「原作漫画の作者・山田鐘人先生監修の書き下ろし小説から作った新曲」と紹介されていました。まさに、フリーレンのためのオープニング曲なのですね。

そして、この曲は"推しの子"のオープニング曲『アイドル』なども収録されたEPでも聴けるとのこと。

ジャケット、シンプルでこういうの好き。制作の背景とか知りたい。

それと、miletさんもコメント。

どちらの曲もPVを聴いた限りでは、フリーレンの世界とのシンクロ度が高そうな印象。この断片的な試聴では物足りなさ過ぎるので、早くフルバージョンで聴きたいですね。

にしても、ここまで体制を整えてくるとは。凄い、としか言いようがない。

完全に秋アニメ、いや今年のアニメの覇権を取りに来たような布陣で挑む『葬送のフリーレン』。原作勢としては、まじで楽しみしかありません。

【感想・ネタバレなし】一進一退の頁めくりが恐怖を紡ぐ 〜 ホラー小説『近畿地方のある場所について』

カクヨム発のモキュメンタリーホラー小説、『近畿地方のある場所について』。著者は背筋さん。

以前、このブログで紹介した青春恋愛ホラー小説『夜道を歩く時、彼女が隣にいる気がしてならない』の著者、和田正雪さん経由で知った本作ですが、カドブンの企画「今読むべきホラー&ミステリ5選」の選者が本作の著者で、その内容に興味津々だったこともあり発売日に購入。早速、その日の夕方から読み始めます。

まず、あらすじ。サイトにはこう書かれています。

情報をお持ちの方はご連絡ください

近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきました。 

これだけなんです、あらすじ。なので情報収集のために紹介PV探してみると、こんなショート動画を発見。再生して見ましたが、謎が深まるだけでした。

続いて本の表紙。インパクトがあり印象的なのですが、特に目をひいたのは、本につけられた帯の文字

「見つけてくださってありがとうございます。」

書かれているのはこれだけですが、何かしら恐怖を感じずにはいられず・・・・・・。

ひとまず気持ちを引き締めてページをめくり始めたものの、冒頭の短編は何というか、そこまで怖さを感じるものではありませんでした。

「こんな感じの怪談集が続く?そんなわけないよな」そう思いながら読み進めるうちに、あらすじの"意味"を理解し始めます。すると、印象が激変。

それからというもの、とにかくページをめくる手が常に慌ただしく忙しくなります。

話が進むたびに何かが僕の中で引っかかり、その理由を探るべく過去のページを再び読みなおす。底知れぬ恐怖の正体を探るために、そんなことをずっと繰り返すのです。

時が経つにつれ、指先に汗。部屋の暑さのせいか、指使いの忙しさのためか、それとも恐怖によるものなのか。僅かに湿った指を操り、読んでは戻り、読んでは戻りを繰り返し、戻ったページにだけ残る指跡。

しおり代わりのシールのような跡を頼りに読み進めると、やがて僕は気づきます

奇妙な出来事や噂、オカルトな記事、伝承、怪異・・・・・・時系列もバラバラな話の数々に見いだされる共通性と、それらに含まれる謎や異質さが巧妙に絡まり重なることで浮かび上がる事実に。

まるで謎解きのような展開は、ラストに行き着くまでのリアリティさを強調し、積み重なる謎は更なる恐怖を産み続けます。

そうしてたどり着く結末ですが・・・・・・そうですね、他言無用とだけは言っておきます。危ないですから

ひと息ついて本を閉じると、時計は午前2時を過ぎていました。翌日(既に当日ですが)の早朝から予定があるにも関わらず、それでも僕の好奇心をつかんで離さない巧さと力強さが、この本にはありました。ぜひ手に取って読んで頂きたい作品です。

なお、これから読まれる方へのアドバイスとしては、常に『視点』に着目するとよいかもしれません。

また、本作をWebで未読の方は書籍化された紙の本から読むことを強く強くオススメします。特に、巻末の付録(袋綴じ!!)が最高です。

柿でも食べながらまったりとお楽しみください。

 

最後に。

 

ごんな独り語りのブログを

見つけてくださってありがとうございます。